自給自足の有機農業を始める際に、まず初めに大切になるのは、土作りでしょう。この記事では、私が小川町有機農業入門講座で身についた土作りについてまとめてみました。
まずは、畑の状態をよく観察することと、手に入れやすい資材の選択から始めることになります。この作業は自分の有機農業スタイルを決めることにもなりますので、よく考えるべきだと思います。自給自足を目指して有機農業を始める方、是非参考にしてください。
長期的な戦略が、重要と感じた出来事
講義の中で、先生の言われた次のような言葉が、忘れられない!
「どのような作物を作るにしても基本的に1年に1回だ 30年やったって30回しかできないことになる」
本当にその通りだと思うとともに、農業がいかに 長期的に取り組むべきことであるか、感じたものです。特に、有機農業の基本は土作りにあると、聞いた時に、長期的な視土の重要さを感じたものです。
土への思い
さて、小川町有機農業入門講座に参加して最初に講義を受けたのは、霜里農場でした。2022年4月の1週目の土曜日から3回にわたっての講義でした。この講座は実践中心なのが大きな特徴であると以前書きましたが、ここ霜里農場でも実践と並行して説明を受けるスタイルで進んでいきます。
この農場での土作りの一つが木材チップの活用でした。農場の一角には、木材チップが山のように積み上げられている場所があり、その横にはホイールローダが置いてありました。この木材チップは、圃場でマルチに使います。(圃場は農地のこと。マルチとは、覆うことをいいます。)
(このブートーザみたいな乗り物が、ホイルローダーです。これで、木材チップの切り返しや、軽トラへの積み込みをします。)
この木材チップで畝を覆ったり(マルチともいいます)したわけですが、その作業の時に土を触った感触が、自分の畑のものとは大きく違ったのです。・・柔らかいな!そんな風に感じたのが最初の印象です。その日に使った木材チップはまだ完熟していなくて、半熟状態でした。
(完熟した状態とは、木の性質がなくなり土のようになること。半熟状態とはまだ木の性質が残っている状態で完熟状態への移行途中のこと)
半熟状態のチップは、土の中にすき込むことはせず、定植した作物の周りの土を覆っていきます(木材チップが完熟すると木としての性質がなくなり、土にかっていきます。半熟状態というのは、まだ木の状態が少し残っている状態を言います。目安としては完熟すると山の土のようなとてもいい匂いです)。
土の中にすき込むのはしないのかと質問したところ、半熟状態で土の中にすき込んでしまうと、土の中のバランスを崩してしまうとのことでした。このやり取りから、私は農家の方の土に対する思いを考え始めたのでした。
私の畑の土は、霜里農場のものと比較すると明らかに硬く、肌触りもなんとなく暖かさが足りないのです。10cmほど掘り下げるといたるところに粘土の塊がある土質なのです。自分の家の畑でありながら、初めて農作業をしてみて、やっとわかったのです。
少し気になったので畑のいたるところを掘ってみたところ、場所によって粘土の量がだいぶ違っていました。粘土質だと水はけが悪いのは想像できますので、土質によって栽培する種類を変える必要がありそうです。そこで、畑を土質でいくつかに区分けして、栽培することにしました。
土の保護に必要な4つの方法
4つの農場で講義を受けてみて、土の保護には、幾通りかあるものの、土の状態を見極め、方法選択が重要だと感じました。以下に4つの農場の特徴を記します。
木材チップで雑草対策&肥料
一つ目は、霜里農場です。この農場で、土作りに一躍かっていたのは、木材チップでした。木材チップを使う理由は、手に入れやすいルートを持っているからとのことでした。相当多くの量を使いますので、置き場所は、100坪以上あったように思います。この木材チップは、雑草対策でもあり、いずれ完熟して土の中に入っていき肥料にもなっていくのです。
木材チップの山。これで畝を覆ったり(マルチとも言います)をすることで、雑草対策,保温対策,最終的には、土の中に入っていき、良質な土を作ることになる。
ここ霜里農場では、木材チップの仕入れルートがありますが、個人で木材チップを用意するといっても身近で購入するのが難しいです。通販とかで購入可能ですが、費用もバカになりません。私たち家庭菜園では、木材チップ以外で考えた方が良いと思います。やはり雑草とか落ち葉とかになりますね。
徹底した作付け管理で連作障害の防止
2つ目は、風の丘ファーム。この農場では、作付け管理をかなり精密にやっており、連作障害を起こさないように、作物の特性や栽培のタイミングを見極めていました。私が学んだ4件の農家さんでは規模が一番大きく、研修生の方も3人ほど来ていましたので、朝礼の時に作業状態の確認をされていたのが印象的でした。内容は、およそ下記の通りでした。
- どの圃場のどこに何の作物をいつ 作付けしたか を明確に記してある。
- 成長の推移とどのような作業を施したかが明確であった。
- 収量はどのようだったかおよび 反省点が次年度の参考になるように書かれていた。
当たり前ですが、農業は自然相手の作業であるため、克明に記載されたいました。自給自足でも作付け管理は大切だと思います。記録を残すようにしましょう。
雑草で雑草対策&肥料
3つ目は、河村農場。この農場で印象に残ったのは、雑草をマルチ(畝を覆うこと)しての使用方法。特徴的なのは、雑草を堆肥にしてから使うのではなく、刈り取った雑草を、そのまま定植した作物の周りに厚く敷いていきます。
この雑草は田んぼの畦のものを刈り取って軽トラで運んできたもの。グループ8人みんなで汗を流したのが楽しかったですね。
畝を覆った雑草はそのまま肥料として土に還っていきますので、自然の循環でもあり安全でとても安心できると感じました。
雑草マルチ(畝を覆うこと)として、作物の周りにたっぷりと敷いている。この農場では、雑草以外を肥料として使っているものはない。
定植した後の雑草マルチ(畝を覆うこと)は、防草対策に効果を発揮していた。ビニールシートのようにゴミになることもない。
時間が経てば土の中に入っていき肥料になるという安全性。
あえてデメリットを考えてみると、田んぼの畦での刈り取りと、圃場への運搬作業、それと敷き込み手間、そんなところでしょうか。
その場で完結させる循環型農業
4つ目の横田農場。この農場の一番の特徴は、農地内で完結させ循環させるやり方でした。その農地に外から入れるものは何もないのです。肥料さえも入れないのです。肥料にするのは緑肥(土壌を回復させる効果のある植物のこと)を使っていました。
土を休ませるために作物は作らず、土壌を回復させる効果のある植物(これを緑肥といいます)を育てることで土壌内の成分バランスを整えたり、刈り取った後、数ヶ月放置し、土にすき込んでいきます。私が講義を受けた時は、緑肥(土壌を回復させる効果のある植物のこと)として麦が育っていました。5月の後半のことです。
このように、農地には、外から他のものは何も入れずに、農地内で完結する循環型農業になっているわけです。
草マルチ(雑草,緑肥(土壌を回復させる効果のある植物のこと)で畝を覆うこと)の効果としては、土づくりの物理性,化学性,生物性の改善,連作障害の軽減 など多くのことが期待できます。
感想と私としての覚書
結果を急がないこと、作物の様子をよく観察して、作物が喜んでいるかを感じ取るように作業をしているかのようでした。然との折り合いを考え続けているようにも見えましたね。言葉にすると難しいのですが、いくつか書いてみますね。
- 人工的なものは畑に入れない。有機肥料として販売されているからと安易に使わず、素性の分かった原料のものだけを使う。
- 自分の畑の土壌にあった作物を作る。最終的にはやってみないと分からないので、試行錯誤の継続となる。
- 天気予報を利用する。例えば、雨予報があったら雨の前に種まきをするとかなど。
農業塾講義での覚書
- 過度な耕作を控える。連作障害,土の保護,休ませることに気を配る。土を休ませることで長期的に成功することを目指そう。
- 雑草も大切な資材となりうる。雑草マルチ(畝を覆うこと)として使おう。緑肥(土壌を回復させる効果のある植物のこと)として最大限に利用。
- 害虫対策として、コンパニオンプランツ,バンカープランツを使う。
- ローテーション栽培をしよう。異なる種類の作物を順番に栽培することで、土の栄養の偏りを防いだり、病気や害虫の発生を抑えることを目指す。土壌改善効果がある作物を選び、それらを栽培する。
まとめ
有機農法の大前提は、自然の力を最大限に利用することにあると感じました。自然に逆らった無理なやり方はせず、自分の畑の土の状態をよく観察し、土を守りながらより良い土に育てていくことが大切と思います。
私が講義を受けた4件の農家さんでも、無理をせず自然の力を上手に取り入れていると感じることがたくさんありました。天候と折り合いをつけ、作物の状態をよく観察し、天候と作物の状態が整ったところで、定植をするといったようなことです。
この記事でかいてみた、4件の農家さんの特徴的なやり方、
- 木材チップの活用
- 徹底した作付け管理と圃場管理
- 雑草をマルチ(畝を覆うこと)として活用
- 圃場内で完結する持続循環型農法
などについてです。有機農業を目指す皆さん、自分の畑や人脈を総合的に判断して、自然との折り合いを意識しつつ、無理のない作業で、長期的な視野で自給自足していきましょう。